第5章
漫画家・アニメーターの卵を育成
~3財団を統合し、財団法人上月スポーツ・教育財団に~
2005 - 2009

平成17年~21年

上月教育財団は、新たに「漫画家育成事業」(後に漫画家・アニメーター育成事業に改称)を開始し漫画家・アニメーター・イラストレーターなどを目指す15歳から25歳程度までの方を対象に助成している。中学生から高校、大学、専門学校生、社会人までと対象範囲は広い。作品を応募して一次審査に通ると、二次審査会で実技審査と面接を行い、助成対象者を決定する。選ばれた方々には年額60万円が支給される。第1回の助成対象者は20名。その後、応募者数、対象者数ともに年々増加している。

国際的に日本独自の文化が評価され、「クール・ジャパン」の言葉も生まれた。日本の漫画、アニメが世界から注目を浴びる現実を捉え、漫画家やアニメーター育成に力を入れていく。
若手の漫画家を育てようとする出版社や関係団体も多くあるが、隠れた才能、能力を持った方々はまだまだ多く眠ったままである。そういう方々を支えていこうというのが趣旨で、これまでの助成対象者の中には、既にプロとしてデビューを果たした方もいる。

同事業の助成対象者を選考する漫画家でイラストレーターの成瀬國晴審査委員は、「支援を受けた方はその幸せ、意義を理解してほしいですね。いただいたお金は賞金ではなく、明日のための糧となるものだからお返しする義務があるもの。それは立派な漫画家、イラストレーターになることです」と、漫画家の卵たちにエールを送る。同じく審査委員を務める手塚プロダクションの松谷孝征社長は、「ライバルと同じことをしていては生き残れませんよ。最初は真似でもいいし、へたくそでもいいけど、個性を磨き続けて、徐々に唯一無二の個性、オリジナリティを獲得しないと」とアドバイスする。

また、上月情報教育財団は、高度情報化社会に対応し、児童・生徒の能力育成のため、実用的でかつ楽しく遊びながら学べるエデュテインメントソフトの開発研究に助成する「エデュテインメント開発研究助成事業」をスタートさせた。

2005年、財団は大きな節目を迎える。
上月スポーツ財団は、上月教育財団と上月情報教育財団を統合し、「財団法人上月スポーツ・教育財団」に名称を変更した。スポーツ、教育、文化の3つが合併して新たにスタートし、現在に至っている。「スポーツ選手支援事業」「上月スポーツ賞」「スポーツ団体・競技大会助成事業」「スポーツ研究助成事業」「スポーツトレーニング調査・研究事業」のスポーツ5事業は軌道に乗っていった。

「スポーツ選手支援事業」の対象者が2002年の第1回に水泳、体操の2競技だけだったのが、翌年から柔道、スキー、スケート、陸上競技が加わり、2011年には12競技にまで拡充している。支援対象者数も延べ550名と年々増え続け、その効果も絶大だ。選手たちのモチベーションが上がり、再度支援してもらいたいという気持ちが高まっていくようだ。柔道52kg級で世界女王に輝いた中村美里選手は「助成金のおかげで能力や技術の向上につながった」と喜ぶ。

オリンピック・世界選手権等で優秀な成績を挙げた選手に贈られる「上月スポーツ賞」も複数回受賞する選手が増えた。

中村選手はこれまで4度、男子フィギュアスケートの第一人者、髙橋大輔選手も4度の最多受賞を誇る。男子体操の世界チャンピオン、内村航平選手は「この賞を力に、ますます精進したい。財団からの支援で、また次も頑張ろうとか、あの時の成績でこんな賞がもらえたとか、初心に帰れるとてもいい制度だと思います。お金をもらうことよりも、この賞をもらえるだけで素晴らしいことだと感じるんですよ」と評価した。

「スポーツ団体・競技大会助成事業」は、2004年9月に横浜国際プールで開催された「シンクロナイズドスイミング・ワールドグランプリ IN JAPAN2004」の助成から始まる。その後、全日本体操競技選手権大会、日本陸上競技選手権大会など、数多くのスポーツ団体・競技大会に支援を続け、2012年現在で延べ130 件を超えるものとなっている。

一方、上月情報教育財団で推進していた「情報機器給付事業」を発展させ、教育・文化の振興に寄与するため教育・文化関係の機関、団体、個人に助成を行う「教育・文化振興助成事業」も本格始動した。助成実績は「マイタウンマップ・コンクール」、「全国高等学校ロボット競技大会」などがある。

2005~2006年には、WFP国際連合世界食糧計画のビデオゲーム「フードフォース」(日本語版)CD-ROM及び教師用ガイド冊子の制作を支援した。
「フードフォース」は、世界中の飢餓の現状とWFP の緊急食糧援助活動を学び、理解してもらうことを目的とした体験型ビデオゲームで、同日本語版のCD-ROM及び教師用ガイド冊子の制作を支援することで、より多くの方へ飢餓救済と人道援助にかかわる学習の機会を提供する手助けをした。

第2回(2005年度)「漫画家育成事業」二次審査会(2005年7月22日)

財団法人上月スポーツ財団の寄附行為の一部変更(3財団統合)認可(2005年3月25日)

2007年度(第1回)「上月スポーツ賞」表彰式(2007年5月8日)

2007年度(第2回)「上月スポーツ賞」表彰式(2008年3月31日)